二地域居住という選択──移動が“暮らし”に変わるとき

ーわたしたちは、“帰る場所”をひとつに決めなくてもいい時代を生きています。
二地域居住や多拠点生活は、単なる「住む場所の分散」ではありません。
旅先で「また来たね」と言われたときに、ふと“帰ってきた”気持ちになる。
それは自分だけの「居場所」が少しずつ増え、複数の生活圏のなかで自分らしい居心地を見つける新しい生き方の形かもしれません。
■二地域居住とは
主な生活拠点とは別の特定の地域に生活拠点を持つライフスタイルです。豊かな自然や地域コミュニティへの参加など、多様化する価値観に応えると共に、地域活性化にも寄与する暮らし方として注目を集めています。(日本航空株式会社資料より抜粋)
HafH × JAL|ユーザー座談会より
2025年春、京都のホテルでHafH主催の二拠点居住ユーザー座談会が開催されました。
HafHのプロダクト担当者、JALの二地域居住や地域連携担当者、そして二拠点居住に関心・実践する4名のHafHアンバサダーが集いました。
デザイナー、カメラマン、物販業、プロダクトマネージャー、ダンサーなど、多様な職業の参加者が仕事や暮らし、地域との関わりについて率直に語り合いました。
本レポートでは、その対話から浮かび上がった暮らしと移動の5つのリアルをご紹介します。
参加者プロフィール

1|きっかけは、ふとした“違和感”から
物販業のアルファさんは、仕事の性質上、世界中を飛び回る。コロナ禍のギリシャでPCR検査に陽性反応が出てしまい、思いがけず1ヶ月以上も日本に帰れなかった経験から
「そのとき、ふと考えたんです。家って本当に必要なのかなって。毎月何万円も払っているのに、そこにほとんどいない自分がいるって、不思議な気持ちになりました」という想いがありました。
そこから彼の暮らしは、自由で軽やかな旅の連続に変わったそうです。
「いつの間にか、空港から30分以内に住む場所を選ぶようになっていました。動きやすさがそのまま暮らしやすさになっているんです」
Koyaさんは、撮影先の地方で知り合った人たちとの縁が拠点の形成に繋がったそうです。
「仕事を通じて築いた関係が、次の仕事や旅先を呼んでくれる。いつの間にか、“この場所が自分の拠点だ”と思えるようになりました」
「何度も訪れる土地に知り合いができて、自然とそこが拠点に。
仕事が人との関係を生み、その関係がまた新たな土地へ呼んでくれる。
移動と仕事は、切っても切れない関係なんです」
旅は単なる移動ではなく、心のリセットであり、新しい自分を発見する機会。
多拠点生活は、そんな旅の感覚を暮らしに持ち込むことでもあるのです。
2|仕事・暮らし・人間関係をどう調和させるか
多拠点生活は、ただの住む場所の分散ではなく、「仕事」と密接に結びつく生き方でもあります。
Koyaさんは、こう話してくれました。
「仕事の幅が広がる場所を自然と拠点に選ぶことが多いです。例えば、店舗デザインや写真、SNS運用など幅広い仕事をする中で、仕事のつながりが深い土地が生活の中心になっていくんです」
しかし、仕事と同じくらい、人間関係も重要なテーマでした。
メラさんは、「地域の人たちは温かく歓迎してくれるけれど、“ずっとここにいなよ”と言われると、正直プレッシャーになることもある」と率直に語ります。
「だから、自分にとっては“名前を知ってもらっているくらい”、軽やかな距離感が心地よいときもあります」
同じくアルファさんも、
「濃密な関係はありがたいけど、ずっとそこにいると自分を見失いそうになることもある」と話し、
「複数拠点があれば、精神的なセーフティネットになり、“ここがダメでも別の場所がある”と思えることが安心につながる」と教えてくれました。
Koyaさん、Sakimoさんは、
「多拠点生活は、自分らしさを保つための手段。どこかに強く根ざすことだけが生き方ではなく、ゆるやかに関わりながら、気分や環境に合わせて場所を選ぶ生き方が今の時代に合っている」と言います。
こうした対話は、仕事の可能性を追求しながら、無理のない人間関係で自分を守り、心地よく暮らす、多拠点生活の精神的な豊かさを伝えています。
3|アイデンティティと“根ざす”ことの新しいカタチ
多拠点生活の中で、参加者たちは「どこに根ざすのか」という問いを何度も口にしました。
sakimoさんはこう語ります。
「徳島に何度も通っていて、住民票も家もないけれど、『また来たね』と言われると、ふと“帰ってきた”気持ちになるんです。住所や書類の上の繋がりではなく、誰かに認められ、自分が受け入れられている感覚。それが、自分にとっての“根ざす”ということかもしれません」
この感覚は、単なる場所の所有や居住では測れません。むしろ、深く関わりすぎず、地域との“ちょうどいい距離感”を保つことが、心地よい居場所を育むことにつながっています。
メラさんもこう話します。
「島の人たちは本当に温かく居心地が良いけれど、自分自身の成長や新たな発見を求めて色々な土地を巡り、また島に戻ってくるという循環を大切にしたいと思っています。」
また、多拠点生活はアイデンティティの揺らぎを伴うことも。旅先で「また来たね」と言われるたびに、地域ごとの自分らしさが少しずつ形作られていきます。
これまでの「一つの場所に根を張る」という感覚とは違い、場所に縛られず、心地よい場所に自由に“根ざし”、多様な自分を生きる。
そんな新しい暮らし方のカタチが、多拠点生活者の間で静かに広がっています。
4|移動のコストと制度の後押し
二地域居住には、移動費用や滞在費など、生活の自由度を支える一方で避けられないコストが伴います。これらのコストは、多くの人にとって大きなハードルとなり、チャレンジの足かせになりがちです。
メラさんは、ある地域での交通費補助があったことで、自分の暮らし方に踏み出す勇気を持てた経験を語ります。
「月3万円までの交通費補助があったおかげで、初めて思い切って新しい拠点を持つチャレンジができました。お金は多拠点生活への最大の壁であると同時に、うまく制度を活用できれば突破口にもなります」
Akingさんもこう話します。
「補助制度は知られていなければ、存在しないのと同じです。誰もが等しく知り、活用できるような情報発信が重要だと思います。適切な制度とそれをわかりやすく届ける仕組みがあれば、多くの人が安心して一歩を踏み出せるはずです」
また、単なる経済的負担の軽減にとどまらず、制度や支援があることで「自分は支えられている」という安心感が生まれ、心の余裕にもつながります。
これからの社会において、多様な暮らし方を応援する仕組みづくりが、生活者の挑戦と自由を後押ししていくことが期待されます。
5|子育て世代のリアルな悩みと希望
多拠点生活に挑戦する子育て世代は、自由な暮らし方への期待と同時に現実的な悩みも抱えています。
例えば、国内に複数拠点(東京、石垣島、大阪、徳島)に拠点を持つHafHプロダクト担当者は、自然豊かな環境での子育てに魅力を感じつつ、将来的には教育環境の確保に強い関心を寄せています。
「子どもが将来、多様な選択肢を持てるように、教育・居住環境を整えたい。」
一方で、子どもの成長とともに、移動の頻度や生活の変化に制約が出てくる現実も見据えています。
「子どもが小学校に上がると、移動がしづらくなり、どこに落ち着くべきか悩んでいます」
さらに、拠点を複数持つことで、複数のコミュニティと居場所を確保しながらも、家族それぞれのライフスタイルのバランスを取る難しさも浮き彫りになりました。
「多様な経験をや選択肢作りを維持しながら、地に根ざした生活をどう整えるかが課題です」
こうした悩みと向き合いながらも、子育て世代は新しい暮らし方に希望を持ち、未来のライフスタイルを模索しています。
「多様な拠点を活用しながら、子どもにとっても自分にとっても心地よい環境をつくっていきたい」
二地域居住は単なる住まいの選択肢に留まらず、家族の成長や幸せを見据えた、柔軟で前向きな暮らしの形として広がりつつあります。
流動する暮らしには、豊かさが宿る
多くの参加者の意見から見えてきたのは、
定住しない暮らしには挑戦もある一方で、そこに自由や多様な可能性が広がっているということでした。
さまざまな場所に「帰ってこれる場所」があり、
ゆるやかな関係が築かれていくことが、
場所に縛られずに自分らしく生きる力につながっているのです。
大切なのは、「どこで生きるか」ではなく、
「どう生きて、どこに帰りたいか」を自分で考えること。
多拠点生活を送る人たちが感じているのは、
旅の自由さや移動の軽やかさとともに、
新しい自分と出会い、新しい人生の価値観を紡いでいくことです。
あなたの暮らしに、もう一つの居場所を。あなたも挑戦してみませんか?
仕事や趣味、ライフスタイルに合わせて、ふたつ以上の拠点を持つ──
それが「二地域居住」という新しい選択肢です。
もっと自由に、もっと自分らしく生きるための暮らし方がここにあります。
もっと自由に、もっと自分らしく生きるための暮らし方を、
つみたて旅行サービスである「HafH(ハフ)」がサポートします。
二地域居住をもっと快適に、もっと身近に。
日本航空株式会社が提供する【つながる、二地域暮らし】専用サイトもぜひご覧ください。
※本座談会は、JALとHafHの連携による新たなプロダクト開発のために、多拠点生活に興味・関心のある方々の動機や滞在傾向を深く理解し、最終的には多くの人に自分ごととして捉えてもらうことを目的に実施されています。
ユーザーヒアリング取材時:2025年3月
会場:ザ ロイヤルパークキャンバス京都二条
https://www.hafh.com/properties/1131