【旅の目的になるホテル×GMインタビュー】感性に新しい風を吹き込み、新しい発想やひらめきが生まれるホテル-Zentis Osaka

「旅の目的になるホテル」

日常から離れ、贅沢な時間を過ごし癒されるだけじゃない。その滞在が自身の感性を磨き、身も心も豊かにするようなホテル。そんな、旅の目的にふさわしいこだわりのホテルの魅力をGM(総支配人)にインタビューし深掘りします。

今回は、日本を代表するラグジュアリーホテル「パレスホテル東京」を運営してきたパレスホテルが新たに立ち上げた新ブランド「Zentis Osaka」の秋山GMにお話を伺ってきました。

フルサービスホテルとは違った「個性」を活かしたサービス

–まずはじめに、日本を代表するラグジュアリーホテル「パレスホテル東京」から新ブランド「Zentis Osaka」へ。今までとは違ったカテゴリーだからこそチャレンジしたいことはありますか?

▲秋山 幹雄 総支配人
兵庫県出身。大阪の大学を卒業後、1998 年に大阪市内の外資系ホテルに入社。2003 年よりシンガポール、バン
コク、上海、マカオにて 10 年間にわたり複数のグローバルホテルチェーンで経験を積み、2013 年に株式会社パレスホテルに入社。グローバルセールス部に配属後、グローバルセールス部一課支配人としてアジアや中東マーケットを担当し、各国の賓客や王室の営業を担当。2020 年 2 月、パレスホテル東京 宿泊部長に就任し、コロナ禍において未曽有の状況であったホテル現場を統括し、2023 年 3 月、出身地である関西に戻り、Zentis Osaka 総支配人に就任。

私自身は今年の3月に着任をしたのですが、Zentis Osakaは2020年の7月に「Encounters of a New Kind 感性が、深呼吸する場所。」をブランドコンセプトにオープンしました。

前任の総支配人はじめオープニングメンバーが、この3年間でしっかりとZentisのブランドを作り上げてくれたので、私が着任した際には非常にスムーズに入ることができました。

3年間かけてブランドを作り上げてきたホテルだからこそ、今後は個性を活かしてお客様とスタッフの顔が見えるホテルにしたいですね。

–個性というのは具体的にどういったものになるんですか?

Zentis Osakaでは、スタッフもサービスもあまり型にはめず、個人の裁量が大きいです。

例えば我々はマルチタスクで仕事をしており、フロントのスタッフがロビーに出ることもあれば、時にはレストランのご案内をする時もあるなど、スタッフが自分がここはこうした方がよいかなという時には、縛りを設けず自由に動いています。

最近あった話なのですが、あるスタッフが外国人夫婦のお客様に「串カツ」を食べに行きたいのでおすすめはないかと尋ねられ、ここから10分ほどのお店を紹介していました。その場所はわかりにくい場所にあったので、そばにいた私は「ホテルは落ち着いているから、お店までご案内してさしあげて」とスタッフに声を掛けました。

ご案内をしたらおそらく言ってくださるだろうなと思っていましたが、案の定、「一緒に食べよう、とお客様が仰るのですがどうしたらよいですか?」とスタッフから電話がきました。

もちろん、「全然よいよ、お客様と一緒に楽しんできてね」と。

そのスタッフはあまり英語が得意ではなかったのですが、お客様は「楽しかった」と後日私にも話してくれました。

こういったことは、もちろんやってよいと思っています。お客様とスタッフの顔が見えるホテルを目指しているので、逆に、お客様に誘われた時、スタッフが「すみません、仕事中なので」とお断りして帰ってくるようなホテルにはしたくないと。

細部にまでこだわり抜くパレスホテルのDNA

–宿泊主体型ホテルブランド「Zentis」ならではの魅力とは?

ホテルのコンセプトが一気通貫していることろが、Zentis Osakaの魅力だと思います。

独立系ホテル運営会社のパレスホテルが展開する宿泊主体型ホテルとして、サービスはもちろんなのですが、ハードに関しても設計段階から相当細部にこだわりました。

そういったところはまさに、パレスホテルのDNAを引き継いでいるところかなと。

ホテルのインテリアデザインは、世界でいくつものラグジュアリーホテルを手掛けるイギリス人女性デザイナー、タラ・バーナード氏に依頼したのですが、彼女からの提案で驚かされることがたくさんありました。

バスルームがガラス張りだったり、日本では当たり前にあるテレビ横のサイドボードやワーキングデスクがなかったり。

ですが、デザイナーが提案する一つ一つのデザインが、我々が考えるコンセプトに沿っています。それをスタッフが知り、お客様をお迎えすることで、最終的にお客様に居心地の良さを感じていただくことに繋がっているなと。

また、五感で感じる部分、音響デザインなども開発段階からパートナー会社と検討し、ただBGMを流すのではなく、ホテルのコンセプトに沿うよう作り上げました。

ホテルは一度できあがってしまうと、スピーカーの位置などはなかなか変えにくいのですが、

設計の段階でディテールまでしっかり話し合い、形にしたことで、よいハードができたなと思っています。

–まるで海外のレジデンスに住んでいる様な感覚になるゲストラウンジ。畏まりすぎずくつろげるラウンジのこだわりを教えてください。

エントランスを入ると真ん中に大きな階段があって、その裏にゲストラウンジが広がり、そこには暖炉や、テラスがある。まさに「イギリスの邸宅」ですよね。これはZentis Osakaのデザインの一つのテーマになっています。

HafHの「Home away from home」とまさに一緒なのですが、そこを軸に置いています。誰にとってもやっぱり家っていうものはくつろげる場所ですよね。

また、テラスというスペースも重要なポイントで、実はパレスホテルが手がけるパレスホテル東京には外に出ることができる空間が多く、1階のオールデイダイニング「グランド キッチン」や、6階のラウンジバー「プリヴェ」にはテラスがあり、6割近くの客室にはバルコニーがあります。

日本の四季を考えると、テラスを実際使える時期というのは春と秋なのです。夏は暑すぎるし、冬になると寒すぎてなかなか使用しにくいデッドスペースになってしまう。

それでもテラスを置くのは、植物の緑、自然を取り入れることで、お客様にとって一番心安らぐ居心地がよい空間をご提供できると考えているからです。

実際に、「テラスの緑があるだけで全然空気感が変わる」などといったお声もいただいています。

もう一つ、私たちZentisはライフスタイルホテルというカテゴリーに属しますが、近年、グローバルチェーンが運営するライフスタイルホテルはZ世代をターゲットにするなど、ある一定の層に焦点を当てているものが多いと思います。

Zentis Osakaは、お客様の層を絞らず、あらゆる年代の方々に居心地が良いと感じていただける空間を目指しています。

–コンパクトながらも、機能性を兼ね備えた客室のこだわりとは?

Zentis Osakaの標準的な客室の広さは25平米なのですが、その25平米を「いかに広く見せるか」という課題がありました。

大体このようなカテゴリーの宿泊主体型ホテルなら、幅3.5メートルほどの縦長の客室が多いのです。

Zentis Osakaの客室は幅4メートル×奥行き6メートルの正方形に近い形にすることで、スーツケースを広げられる、狭さを感じない快適な空間を作り上げることができました。

–バスタオルのサイズにもこだわりがあるとか?

そうなんです。

あるスタッフがパレスホテル東京のバスタオルをZentis Osakaに持ってきた時に、パレスホテル東京では感じなかったのですが、25平米の客室にとっては大きく、バスルームの面積を占領してしまうのでもう少し小さい方がいいのではないかと提案しました。

一方で、やはりホテルのバスタオルは大きくて包み込まれるようなサイズがよいといった意見もあり、何度も議論を重ねて、バスルームに合わせてちょうどよいサイズに。でも小さくするのなら、今度は質にこだわろうと。厚すぎず、ちょっとふわふわな感じの質感を保ちたいなど、タオル会社と何度も打ち合わせを重ねて今のサイズと質感のバスタオルになりました。

–完全オリジナルになるんですよね、すごい!

バスタオルだけでなく、快眠に必要不可欠なパジャマの肌触りにもこだわっています。
新品がよいのは当然なのですが、ランドリーで洗ってもちゃんと質感が保たれているか
実際にスタッフが着て、寝て、体感して「これだ!」というものを採用しました。

お客様からも好評で、「買いたい」というお言葉もいただいております。

–アメニティのパッケージに添えられた一言がユニークでクスッと笑ってしまいました。身体を洗うボディタオルには「YOUR SHOWER DANCE PARTNER(シャワーをご一緒するダンスパートナー)」など。

ホテルを作る上で知的好奇心と遊び心というのが一つのキーワードで、こういった何気ないところにも仕掛けを作っています。

–最高の身支度を整える場所「Room 001」。どのようなプロセスで生まれたのでしょうか?

宿泊主体型のホテルならコインランドリーはあった方がよい、という提案から始まりました。最初にデザイナーから上がってきたのはランドリールームの横に会議室を設ける案でした。しかしあるスタッフの「Zentisに泊まるお客様って会議するの?」という発言から、会議室を設ける案がなくなり、その空間をどうしようかと。再度議論した結果、ランドリールームを使用する目的は洗濯、アイロン、そして身支度ではないかというアイディアが生まれたのです。せっかく身支度をするのであればZentis Osakaらしく細部にまでこだわり、「最高の身支度ができる場所」というコンセプトができあがりました。

シューシャインサービスやフレグランスを自由に試せるコーナーも設けた宿泊者専用の多目的ルームとして「Room 001」が誕生したのです。

まさにここはZentis Osakaのシグニチャーと言える場所となりました。

「五感を刺激する」カルチャーの発信地となる

–定期開催されている「Salon de Zentis」や、「Zentis Craftsmanship」など宿泊者以外も参加できるイベントはどのような目的で開催されているのでしょうか?

ホテルのコンセプト「Encounters of a New Kind 感性が、深呼吸する場所。」をベースに、今まで出会うことのなかった人々、ビジョン、価値観、アイディア。そんな「新しい何か」との知的邂逅(かいこう)がお客様に新たな息吹を与える場所を目指しています。そういった想いを具現化する場所としてイベントを開催してきました。

また、我々は「五感を刺激する」をイベントのテーマに、最終的に3つのキーワード「Art(芸術)とMusic(音楽)とCraftsmanship(職人技)」を軸にイベントを企画しています。

まず、Art(芸術)は、この堂島浜という場所が、中之島美術館をはじめ、美術館やギャラリーなどが多いエリアであることからキーワードにしました。アーティストとコラボレートしたり、イベントを通して地域の方々と交流を深めています。

Music(音楽)に関しては、世界的アーティストが残した名曲の数々を楽しむレコードイベント「Salon de Zentis」を今までに11回開催しています。

元々お客様からのご紹介で始まったイベントで、これもZentisのコンセプトに通じる、人と人との出会いから生まれた「何か」が具現化したものですね。

イベントは30名様規模で、参加人数が多いものではないのですが、リピーターの方が多いとても濃いイベントとなっています。

最後にCraftsmanship(職人技)。

まず、「Zentis」とは究極を象徴する「Z」とラテン語で本質を表す「entis」、また、日本語の前途(zento)や縁(en)から作られた造語で、自らのライフスタイルの本質を極める人たちが暮らすように滞在を楽しみながら、前途を切り開き、縁と巡り合える場所になるという思いを込めました。

「Zentis Craftsmanship」ではまさにこの「物事の本質に出会える場」をテーマに、金継ぎやロストフラワーを使ったフラワーアレンジメントのイベントを開催してきました。

また、Zentis Osakaだけでは独立して動くのではなく、プロパティの垣根を越えて同じパレスホテル系列のパレスホテル東京のスタッフにも、Zentis Osakaで行うイベントや取り組みを共有し、同じ方向を向いてもらうようにしています。

HafHで自分のライフスタイルにあわせたホテル選びを

–最後にZentis OsakaにとってHafHとは?

ホテルレビューを見ていて、HafHのようなサービスが浸透してきたおかげで、自分のライフスタイルに合わせたホテルステイをするお客様が増えたと感じています。

このインタビューのテーマ「旅の目的になるホテル」ですが、まさにそれは我々の目指している姿でありHafHとはとてもマッチしていると思います。

ここに訪れることで感性に新しい風を吹き込み、新しい発想やひらめきが生まれるホテルを

目指しています。それを旅の目的に、ぜひお越しいただければ嬉しいです。

Zentis Osaka
大阪市北区堂島浜 1-4-26

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